■子供の頃の疑問
「これで働く喜びって感じられるの!?」
親父の会社に帰ってきてから、またたく間に20年がたってしまった。 とりたてて苦労をせずに育ててもらったことに感謝しながらも、それだからこそ、親父がつくったコーヒーと食品卸の会社をただ受け継ぐだけでなく、何か新しい商売をしたいと漠然と思っていた。その思いこそが幼い頃からの自分探しだったように思う。
子供の頃からよく親父の会社の手伝いをしていて、トラックの助手席に乗せてもらってお客様のところに食材を届けるのだが、「こんにちはー」って訪ねても、お客様からは「そこ置いといて!」って、顔もむけてもらえずに言われるだけ。
お客様はこれで満足してくれてるの!? ほんとこれで働く喜びって感じられるの!? 大学を卒業後、食品メーカーに3年、シンガポールに1年駐在して、会社に戻った。親父や周囲が「 えーっ? 」って反対する中、一般のお客様むけのコーヒーと食品の店を立ち上げた。
■がむしゃらに進む先にあるもの
とにかくゼロからつくりあげるわけだから、がむしゃらに進む。思いついたら試す。朝、6時半から店内をまわって、発注のチェック。60枚の発注書をFAXする。8時半にはメーカーからの相次ぐ電話をひとりで受ける。スタッフと打ち合わせをすませると、9時に開店。レジをうつ。試食販売をする。何もかも自分でやる。売り場作りをして退社するのが夜の11時。
こうした毎日の中で、お客様の楽しそうな顔、目の輝き、時々だけどありがとうって言葉、それを引き出すことができた時、働く喜びってこういうことだったんだと、探していた自分、生きている自分がひとつになった瞬間だった。
社会の役にたっていること、お客様に喜んでいただけることこそ、会社が存続していくために必要なことだと、今も若かった頃も変わらずに思い続けている。 |